「ねえ、私とセックスする気はない?」
僕が倒したばかりのスライムは、起き上がるなりそういった。
僕はちょうどムチをしまい、次のモンスターを探しているところだった。
セックス?何を言っているんだろう。
「確認しても?セックスだって?」
「そう」
「仲間になるんじゃなくて?」
「セックスって言ったの、聴こえてなかったの?」
「聴こえた。だから驚いているんだ」
やれやれ。どうして僕がスライムからセックスを誘われているのだろう。
僕はムチのグリップをしばらく眺めていたが、そこには何も答えは書かれていなかった。
「何度も聞いて悪いのだけれど」
「どうぞ」
「ここでいうセックスは、僕たちの中で共通認識の言葉だろうか?」
「おそらくは」
「たとえば、きみらスライムは、何かおしゃべり的なものをセックスと呼ぶとか」
「呼ばない。ピロートーク以外は」
「もしくは、しりとりのようなちょっとしたお遊びをセックスと呼ぶとか」
「呼ばない。尻をとる、という意味なら話は別だけれど」
「もしかして、ペニスとヴァギナを利用した肉体的なコミュニケーションのことを?」
「まさにそのとおり」
僕は深いため息をついた。いろいろ考えることが多すぎた。
それは多面的に複雑で、角度を変えるごとに違った側面を見せる、そんな類の問題だった。
「ものは試しよ」
スライムは自信に満ちた顔をしていた。
「ものは試し」
と僕は言ってみた。
「そう。試してみないと、分からないことって多いのよ。知ってた?」
ものは試し。
僕は口に出さず、もう一度言ってみた。
そして、確かにそうかもしれないなと思った。
出会ったばかりのスライムとセックスをするというのは試してみないと分からないことだと、純粋に思った。
いい洞窟があるの、と言ってスライムは僕を案内した。
そこは程よい奥行きの空洞があり、近くに清潔な水場もあった。
先に水場で身体を洗い、僕が洞窟の中で横になってしばらくすると、水場からスライムが戻ってきた。
スライムはタオルをしていなかった。
「どう?わたしの体」
僕はしばらく考え、 「魅力的だ」 とだけ言った。
「どれくらい魅力的?」
「言葉では表現できないくらい」
「したくなった?」
「とても」
「ほらね」
と言ってスライムは僕の隣に移動した。
「安心して。あなたは何もする必要はないの。全部私がしてあげるから」
スライムとのセックスの仕方なんてまったく見当もつかなかった僕は、正直ほっとした気持ちで体を横にした。
そして考えた。
スライムからセックスに誘われて、流れでここまで来てしまったことは事実だけれど、かと言って僕が何もしなくていいかと言われれば、本当はきっとそうではないのだ。
セックスというのは肉体的なコミュニケーションであって、シャドーボクシングでも走り幅跳びでもない。
お互いの性器を使った双方的で相乗的な活動なのだ。
スライムがセックスをするのではなく、僕とスライムとでセックスを行うのだ。
自分の浅ましい考えを恥じて、僕は体を起こした。
「うん?」
と傾げるスライムに、僕は短く息を吸い覆いかぶさった。
「ちょっと」
驚くスライムに構わず、スライムを両の手で抱いた。
そして弾力性のあるスライムの体に5本の指を這わせ、全身をくまなく愛撫した。
指先に緩急をつけ、スライムの頭からお尻までを丁寧に入念に時間をかけて愛撫し続けた。
そして僕はスライムのお尻のあたりに湿り気を帯びた箇所を見つけた。
ここがスライムのヴァギナなのだと思った。
「ねえ、スライムと寝たことは?」
「実はないんだ」
「そう。とても上手よ。相性がいいのかも」
とスライムは言った。
ありがとう、と僕は言って、その湿り気を帯びた部分を指で強く押してみた。
「んぉほおおおお!!!」
僕は押し黙った。
何か表現しにくい何かを感じた。
とても表現しづらいが、とても重要な何か。物語のトーンを根底から覆すような深い何か。
試しにスライムの秘所をもう一度指で弾いてみた。
「ぬぉほおおおおお!!!!!!」
僕は押し黙って、手を一度抜いた。
それは頭を背後から違和感の塊のようなもので殴打されたかのような、ひどく鈍い重みを内包した混乱だった。
「うん?どうかした?」
とスライムは身体を起こして僕に尋ねた。
僕はしばらく悩んでから正直に言った。
「そんな声が出るとは思わなくて。てっきり」
と僕は慎重に言葉を選んだ。
「てっきり、もっと気取った文体で最後まで行くものとばかり」
僕はとても正直に言った。
「その、ジャズ好きな作家張りな文体というか」
「エルサレムで卵とか壁とかの話をする?」
「そう。そんな感じで最後まで、気取ったセリフで行くものとばかり」
「馬鹿ね。ねえ、さっきのところ、触って」
僕はスライムのヴァギナに指を入れた。
「んほぉ!んっほぉおおお!おっほほぉおおおおお!!!!」
僕は黙ってスライムのヴァギナの中を指で掻き出した。
「むぉおおおおおぉ~~~ん!!きたきたぁああ!!!私のヴァデジャルに指きたああぁぁあぁああ!」
ヴァギナじゃなかったヴァデジャルだった。何それ知らない。何それ怖い。何に指が入ってるのこれ怖い。
「イボグリデスもグリグリ触ってぇぇええ!!!」
イボグリデスって何それ怖い。スライムが訳の分からん器官に触らせようとしてくる怖い。
「んお゛ぉぉお!! ヴァデジャル指で掻き出しながらイボリデスグリグリしてぇぇぇえええ!!ヌポゲにも指いれてぇぇええええ!!」
増えた怖い。スライムの性感帯増えた怖い。
「おごっ、おおぉぉおお!んごぉごおおおおお!!ツェギチョッパリもぉお!!ツェギチョッパリもおおお!!!」
多いやだ怖いスライム性感帯が想像以上に多い怖い。
「おっほおおおおお!もう出ちゃいそおおおおお!!ホイミ汁ぅ!!ホイミ汁出りぅううぅうう!!」
ちょっと世界観が戻ったくらいでは巻き返せないくらい怖い領域に入ってるあと汁つけたら語感めっちゃ気持ち悪い怖い。
「ぼこごひいいいいいぃぃいぃいいい!!!!ゲァナ汁もゲバデュ汁もゲデデゲデル汁もぉおおお!!んほおおおおお!!!!!」
ゲの付く分泌腺多いやだマジ怖い。
「いぐうううううううううう!!!ゲルググミルク出しちゃうゥゥウウウウウウウ!!!!」
まだあったゲの汁マジ怖いすごいの出てきそうマジ怖い怖いよあと怖い。
「もうだめぇぇぇえええ!!もう挿れてぇぇえええ!こんなのぉ!んほおおおお!我慢んほぉ!!!できんほぉぉおほおおおお!!」
「ちょっと」
僕の制止も聞かず、スライムは僕の上に覆いかぶさってきた。
「ちょっと待って。心の準備が、ねえ、ちょっと」
僕は必死でスライムを押しとどめようとしたが、スライムは間を縫うようにして僕の勃起したペニスにかぶさっていった。
膣内に僕のペニスが入った。
「ん゛ぐぉおおおおおぉおお!!ん゛ん゛気゛持゛ち゛ぃ゛いいいいい゛い゛い゛い!!!!!」
「やだちょっと待って何その声怖い」
「んぅほぉぉぉおぅぅ!!!スライムの膣内ギモジイイイイィイイイイ!!!」
「やだ何これ私が最後までんほんほいうやつの話かと思ったら違った怖い」
「ごびゃぁぁあ゛!!僕のお゛ぢ゛ん゛ぽ゛溶けちゃうぉぅうう!んっぼ゛おぉ゛おん゛ほ゛ぬ゛ほお゛ほぉ!!!」
「やだ濁点多い怖いあとぽ゛ってなんて読むの怖い」
「お尻の穴もぉおぁぁぁほじほじいぃぃいああおあぬほおおぉぉお!金玉ぁぁもぉおおおおあああ!!ぐびっぽぼごぼびゃぁっぁあ!」
「下半身の性感帯を全部一気に要求してきた怖い」
「ん゛ぁあ゛ぁあ!アギラズαもぉ舐めてぇえおおおお!!!」
「全部じゃなかった知らない性感帯あった怖い」
「ぬ゛ぼぉぁぁあ!アギラズβもぉおぉぉおお!!」
「何それアギラズ性感帯どうもシリーズっぽい感じがしてきた怖い」
「んほぉ゛お゛お゛ぉぉ!アギラズδからアラギズΘまで一気に舐めてその4秒後にアギラズπとφを交互に3回押して反時計回りアギラズΩグリグリするの7セット繰り返してぇぇぇぇもぉおぉおお!!」
「アギラズやっぱりΩまであったあと初対面での初セックスで超高度な愛撫要求してきた怖い浅まし怖い」
「お゛ち゛ん゛ち゛ん゛の゛先゛っ゛ぽ゛フュモフュモしぇぇえんほがぼりゅばでゅべぼぉぉおお!!」
「知らない愛撫表現出てきた怖い」
「し゛ゅごいよおお゛お゛お゛お゛ぉ!!ゲルググ・ラテもうでるぉるるぉおおぉおおお!!」
「どうも私と近い分泌腺持ってるっぽい怖いゲルググ・ラテの不明感怖い怖いよあと怖い」
「発射する!」
こうして僕は、スライムの体内の奥深くに激しく射精した。
何度も何度もゲルググラテを射精した。
隣で寝息を立てるスライムを尻目に、僕はため息をついて洞窟の壁に背をもたれた。
結局あれから獣のように何度も何度も交わり、スライムは疲れて寝てしまっていた。
やれやれ、と僕は思った。
スライムとセックスをすることで何かを得たという実感はなかったが、今はひどく冷静になっている自分がいるのが分かった。
興奮も情熱もそこにはない。あるのは脱力と虚無感だけだった。
はたと気が付く。
「そうか」
僕は立ち上がり、ステータス画面を確認してみた。
「なるほど、これが」
こうして僕は、賢者に転職を果たしたのだった。
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