2017年4月23日日曜日

キラーマシンとのセックス

キラーマシンからセックスを誘われた時のことを、とてもよく覚えている。 
その時、僕は雪原で経験値稼ぎをしていた。 

「疾風迅雷」の掛け声に合わせて、ムチで電撃を放った僕は、煙を上げて動かなくなったキラーマシンを見下ろした。 
初めて戦った時はとても苦戦をしたが、レベルを上げて適切なスキルを身につければ、こうやってキラーマシンでも圧倒することができる。 
MPが少なくなってきたので、そろそろ宿屋に戻ろうと踵を返したとき、背後から静かに雪を踏む音がした。 
雪を踏む、機械音。 
もう一体いたかと思い、僕はムチのグリップを強く握りなおした。 
「ちょっと待って」 
もう一体のキラーマシンは、僕の前に現れるなり、両手を挙げて言った。 
右手には、いつも手にしている剣がない。 
「待つ?」 
「そう、待って。降参。だめ、戦わない。ノーバトル。ねえ、言葉通じる?」 
「通じる」 
「よかった、いきなり攻撃されたらどうしようかと」 
「戦わない?」 
「戦わないわよ。さっきのあれ」 
と言って、僕の足元に倒れているキラーマシンにモノアイを向ける。 
「あんなの一方的な戦い見せられて、わたしが戦えると思う?」 
「正直に言うと余裕のある戦いだった」 
「散歩してたの。そしたら、すごい音がして」 
「疾風迅雷」 
「光も」 
「そういう技なんだ」 
「冒険者って、どうしてそういう強い技ばかり覚えるのかしら」 
「きみたちだって、マヒャド斬りとかビームとか」 
「それってあなたに通用する?」 
「少し痛い程度には」 
「ほらね」 
キラーマシンはそういって、僕を上から下まで眺めた。 
モノアイが上下する。 
「ムチを装備していて……独りで……その恰好……。きみってもしかして最近有名な」 
「うん?」 
「モンスターとセックスばかりしているっていう」 
僕は驚きのあまりその場で激しくむせた。 
「やっぱり」 
「ちょっと待って。ねえ、それをどこで?」 
「わりと有名。スライムとかばくだんいわと寝たって。あと、ドラキーとかくさった死体とかわらいぶくろとかとも」 
「誤解してる」 
「たとえば?」 
「そんなにはしてない。ドラキーもくさった死体も、わらいぶくろとも」 
「じゃあスライムとばくだんいわは?」 
「黙秘したい」 
「ふふ、やっぱり」 
参ったな、と思い僕は空を見上げた。 
性交のような極めてプライベートな事柄を、そんな風に誰かに指摘されるなんて思ってもみなかったからだ。 
スライムたちが言ったのだろうか、それとも、見られていた? 
僕はあの時、地形的に周りがどうだったかと少し記憶を探した。 
「ねえ、わたしとはどう?」 
考え事をしていた僕は、とっさにその意味がわからなかった。 
僕はとても間抜けな声で聴き返した。 
「……ごめん、聞いてなかった」 
「わたしとはどうって聞いたの」 
「どう、というのは、セックスの誘いであるならば」 
「あるならば」 
「どうといわれても、としか答えられないな」 
「それ以外の回答をする余地はない?」 
「そもそもきみは」 
といって、今度は僕がキラーマシンを改めて観察するように見た。 
モノアイで青いメタリックなボディ、左手は弓と一体化しており、バランスよく足は均等に4つある。 
「マシン系がセックスを?」 
「いけない?」 
「そういうものとは無縁かと」 
「それってすごく失礼なことなの、わかる?」 
「正直に言うとわからなかった。傷つけたのなら謝る」 
「大丈夫。分からないことってたくさんあるの」 
そういってキラーマシンはモノアイの柔らかく光らせた。 
「じゃあこうしましょう。いまからあなたと私はセックスをして」 
「ふむ」 
「互いの理解を深めるの。わたしたちってまだ知らないことがたくさんあるのでしょ?」
「確かに」 
「わたしとのセックス、どんな感じだと思う」 
「想像もつかないな」 
「それって素敵なことだと思わない? 想像もできないセックスって」 
聞いているうちに、僕はそれが本当に素敵なことだと思えるようになってきた。 
キラーマシンとセックスする機会なんて後にも先にもこれで最後だろうし、どんなセックスになるのか、本当に想像ができなかったからだ。 
そしてもう一度キラーマシンの全身を眺めた。 
キラーマシンの弓矢のショルダー部分がパイスラとなっていることに気が付き、僕はしずかに息をのんだ。 
「冒険者というのは」 
とキラーマシンは言った。 
「うん?」 
「未知なるものを探したりする人たちの総称って聞いたことがある」 
「続けて」 
「わたしの身体を、クエストしてみたりしない?」 
僕はためいきをつき、ステータス画面を開いた。 
特にいま急いでいるクエストも目的も、そしてパーティからの誘いもなかった。 
「OK。実は僕も少し退屈をしていたんだ」 
「改めて回答は?」 
「そのクエスト、謹んで」 
効果音とともに、画面に大きくクエスト受領のマークが表示された。 


雪原から少し離れた場所に、林に隠れる形でその洞窟はあった。 
少し肌寒かったので、僕は焚き木にメラで火をつけた。 
「すごい」 
「メラくらい簡単にできる」 
「あまりみたことがないの」 
「きみには、メラは効かないから」 
「でも剣での攻撃は良く効く」 
「見ての通り、僕の武器は柔らかいムチだけど」 
「でも、ここに立派な剣を持っているみたい」 
「きみに突き刺さればいいけど」 
「すごく硬くなってる」 
キラーマシンは丁寧に僕の装備を脱がし、勃起したペニスを露出させた。 
僕はキラーマシンを背後から抱くような態勢で、その身体を愛撫した。 
戦うときには気が付かなかったが、滑らかでとても心地が良かった。 
僕がボディに舌を這わせると、彼女はぶるっと身体を震わせた。 
キラーマシンは、後ろ向きに僕のペニスを握って優しく上下させた。 
「これはどう?」 
「とても気持ちがいい」 
「初めて触るのだけれど」 
「だとしたら才能がある」 
「ありがとう。ならこれはどう?」 
キラーマシンの手の動きが速くなる。 
あまりの刺激に僕は思わず腰を引いた。息が漏れる。 
「ねえ、これって」 
「2回行動」 
「まいったな」 
僕も負けじと、キラーマシンの足の付け根のあたりを手探りで愛撫を繰り返す。 
キラーマシンは濡れていなかった。 
それどころか、ヴァギナらしき裂け目もどこにも見つからなかった。 
僕は焦った。 
ここから、何をどうすればよいのかさっぱりわからなくなってしまった。 
「もういれたくなった?」 
「実は」 
「でもごめんなさい。あなたが思うようなセックスはできないかも」 
「というと?」 
そういってキラーマシンはお尻の部位からひものようなものを伸ばした。 
「これは?」 
「LANケーブルといって」 
「らん?」 
「マシン系は、これを使ってお互いのデータを通信し合うの」 
「性的な?」 
「そう、とてもいやらしいデータ。すごく大量の」 
僕はLANケーブルの先を優しく握った。 
先端はプラスチックでできた透明なプラグソケットでおおわれていた。 
「それを私に挿入れてほしいの」 
「でもそれって」 
「セックスではない?」 
「少なくとも、思っていたものとは」 
「あなたたちも、おもちゃは使うでしょ?」 
「確かに」 
「そういうセックスのかたちもあるの」 
キラーマシンは下半身の真下に四角い穴にそれを挿入してほしいと頼んだ。 
僕は挿入しやすいように、そのLANケーブルの先のプラグソケットを口に含み唾液をつけてその穴に挿入れた。 
カチッ、という音ともに、キラーマシンがびくんと震えた。 
「んんんっ!」 
僕はその声を聞いて、ペニスをさらに硬くさせた。 
「そう、いい。すごく感じる。ねえ、そのまま抜き挿してみて」 
カチッ。 
「んふぅうううっ!」 
カチッ。 
「ああっ……くぅうんっ」 
カチッ。 
「ンッっ、んんーーーっ!」 
一突きごとに、キラーマシンは声を押し殺すようにして震えた。 
そしてその間も、その手は休まずに僕のペニスを高速でしごき続けていた。 
「……すごく気持ちがいい」 
「わたしも……」 
「もうダメかもしれない……」 
「んんっ、いいの、そのまま射精して」 
「もう我慢できない……」 
「いいのよ、来て……」 
快楽の波に思考が塗りつぶされながら、激しく呼吸をして声を荒げる。 
「……もう、だめ……我慢できない……我慢できない!」 
僕は手にしたLANケーブルを強引に抜き取った。 
「んっ!ひぁっ!!」 
キラーマシンが驚く声を上げるのを無視して、僕は自分の尻部分からケーブルを引っ張り出して、キラーマシンの秘所にあてがった。 
「えっ!ええ!? なに、何!?」 
「大丈夫だから」 
「何なの!? 何を挿入れようとしてるの?」 
「これは淫LANケーブルといって」 
「淫LAN!?」 
「僕たち人間種族は、これを使ってお互いのデータを通信し合うのだけど」 
「嘘やだ怖い怖い!この人何言い出すの!やだ知らないなにこれ怖い!」 
「大丈夫、少しだけ、さきっぽだけだから」 
ビッ!と小さな音がして、 
「ぬうほぉぉおおおおおおおんおおんぬ!!!!!!」 
僕のケーブルはキラーマシンの秘所につながった。 
「ああっ、んっ、この感じっ……!ねえ、もしかして……!」 
僕のケーブルには、プラグソケットが付いていなかった。 
「いやぁ!プラグはつけて!ねえ、プラグはつけてぇ!!」 
「大丈夫っ!んほぉぉんん!!絶対っ!生のほうがっ!気持ちいいからっ!ほひびいいいいい!」 
「『新しいフォルダー』が出来ちゃう!『新しいフォルダー (2)』も出来ちゃうからっ!」 
僕はキラーマシンに覆いかぶさるように抱き付き、上り20Mbps 下り20Mbpsの速度でピストンを繰り返した。 
「ン゛ン゛ン゛ギモジイ゛イ゛イ゛イ゛ィ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!」 
「やだやだ怖い卑猥なデータが高速で通信されてる怖い怖いやだ怖い!」 
「上り20Mbpsも出てるぅぅぅ!!すっごい膣内ぬるぬるしてるぅぅぅぅうう!!」 
「インモラルな単語で構成された大量のファイルがどんどん送られてくる怖い怖い!!」
「ん゛ほぅ゛う゛う゛う゛ギモジイイイ!!!!引っかかる感じしゅごいぃぃいいい!!!デフラグされてないカリデータが引っかかって気持ちおほぉぉおお!!!」 
「やだやだ何カリデータって怖い何が起こってるのやだ怖い!!!!」 
「もう射精る!もう射精ちゃうそう!」 
僕は最大上り250Mbps 下り200Mbpsまでピストンを加速させた。 
「いやぁああ!速すぎる!!抜いてっ!膣内はだめぇ!」 
「あと3秒……!2秒……!いっ……射精る!!!」 
そうして僕はキラーマシンの膣内に、『子種.exe』を大量にエクスポートした。 


寒気を覚えて目が覚めた。 
僕は洞窟で独りで眠っていた。 
メラのたき火は少し前に消えていたようで、それは少し前に行われた激しい情事の火も一緒に消えてしまったように感じた。 
僕は服を着て装備を整えて、もう一度周りを見渡した。 

キラーマシンはいなくなっていた。 
いくら劣情に押し負けたとはいえ、あれだけのことをしたのだ。 
もう二度と会ってはくれないだろう。 
申し訳ない気持ちと、仕方のない気持ちが混じり、僕はため息とともに歩き出した。 

そこにぐらっとした違和感。 
歩くごとに、視界にノイズが入るような、不快な苦痛を伴う違和感。 
僕はもしやと思い、ステータス画面を確認した。 

じょうたい:どく 

自業自得だなと思い、僕は道具袋からどくけしそうを取り出した。 

2017年3月31日金曜日

ばくだんいわとのセックス

「あなた、セックスって興味ある?」 
倒したばかりの爆弾岩はその場で砕けることなく、僕にそう言った。 
僕は最初、爆弾岩が何を言っているのかまったくわからずに、ただ黙って握っていたムチの先端を無意識に眺めていた。 
このムチで叩き相手を倒した。 
経験値とゴールドをもらった。 
そしてセックスに誘われている。 
整理するとシンプルだ。シンプルなだけに、思考の逃げ場を失った僕はしずかに混乱していた。 
「失礼、もう一度」 
「セックスに興味があるのかどうかを」 
「ぼくが?」 
「そう、きみ」 
「興味か」 
しばらく言葉を反芻した。興味、興味、興味。 
僕はムチを背中にしまって口を開いた。 
「例えば食事」 
「うん?」 
「例えば睡眠とか」 
「食事と睡眠」 
「食事に興味があるか、睡眠に興味があるか、という質問には正直答えづらい。こういった生活に根付くものは、いましたいかしたくないか、そういう尋ね方のほうが答えやすいかもしれない」 
「なるほど」 
「ねえ、繰り返すようで悪いけれど、きみはぼくをセックスに誘っているという認識であっているかな」 
「まさに」 
「いましがた、きみを倒した僕に?」 
「そのとおり」 
「もしかして」 
「でも誰とでも寝るわけじゃない。わたし、そんなに軽そうに見える?」 
外見のせいかむしろ重そうに見えた。ぼくは爆弾岩を体に乗せることを少し想像した。 
「きみにそのムチで叩かれてるときにね、ふと思ったの。セックスしてもいいかなって」 
「そういうことはよく?」 
「実をいうと初めて。正直自分でも驚いている。でも、そういう気持ちって大事にしたいタイプなの。わかる?」 
「わかるよ」 
「さて、もう質問はない? それじゃあ答えを聞かせて。大丈夫、きみは断っても構わない。それはお互いに恥ずかしいことでもなんでもないの。いまおなかすいている?まだ大丈夫。そういう類のお話。ねえ、きみ。セックスって興味」 
こほん、と咳払い。 
「わたしとセックスをしてみない?」 
そういって、僕に微笑みかけた。 
僕は暫く爆弾岩とのセックスを考えてみた。 
岩とのセックス。岩への愛撫。岩への挿入。岩への抽送。岩への射精。岩へのピロートーク。 
僕は自分の想像力のなさを感じた。その想像は戯画的で性行為の生々しさとリアリティにかけていたからだ。 
ものは試しと誰かが言ったことを思い出した。 
僕は膝をおり、爆弾岩に目線の高さを合わせた。 
「爆弾岩さん」 
「どう、セックスする気になった?」 
「上手くできるかどうかわからいけれど、それでも良ければ」 
僕は少し言葉をためた。 
「答えは、イエスだ」 
僕はいつだってイエスだ。 
爆弾岩とだって、セックスくらいできるはずなのだ。 

僕らは大きな岩場の近くに移動した。 
この岩場の陰なら、誰にも見られないらしい。 
本当に?と僕が聞くと、 
「もし見つかったとしても、わたしは岩に擬態していればいいし、きみはその岩を抱いて眠っているふりをすればいいのよ。誰もわたしたちがセックスをしているなんて思いもしない」 
と言ってコロコロと体を揺らしながら笑った。 
裸で岩を抱いて眠っているところなんて見られなくなかったけど、たしかに岩とセックスをしていると思われるよりははるかにましだった。 
爆弾岩はゆっくりと僕に向かって転がってきた。 
「ねえ、服脱いで」 
僕は装備を外して、体を横に倒した。 
爆弾岩は、裸になった僕の体に優しく乗り、ペニスの周りをゆっくりとごろごろと転がった。 
「どう? 気持ちがいいでしょ」 
「とても」 
「大きくなってきてる。それにすごく硬い」 
「きみよりも?」 
「もう」 
少し笑って、再び勃起したペニスの周りをごろごろと回りだした。 
ふと気になって僕は尋ねた。 
「ところで」 
「なあに?」 
「とても失礼なことを言ってしまうかもしれないんだけど」 
「言ってみて」 
「きみは割れたりしないだろうか?」 
「それはひょっとして、ヴァギナの話?」 
「そうじゃない。きみとセックスして、仮に、きみが絶頂に達したとする」 
「楽しみ」 
「絶頂に達して、きみが突然割れたりしたら、僕はとても複雑な気持ちになる」
「安心して。割れたことはない。それとも、割れるくらい激しくしてくれるってこと?」 
「あるいは」 
僕はもう一歩踏み込んでみた。 
「では、メガンテは?」 
「はい?」 
僕は気になっているのはそこだった。 
セックスする流れにはなっていたけれど、相手は爆弾岩なのだ。 
何かの拍子に、相手が爆発する可能性だって視野に入れておくべきなのだ。 
故意にではないにしろ、お互いの感情の高まりが、そういった不幸な事故を招くことだってあるのかもしれない。 
「メガンテ、爆発。たとえば絶頂と同時に」 
爆弾岩は少しあきれるようにペニスに重心を寄せた。 
「もう、ほんと馬鹿ね。セックスで爆発なんてするわけないじゃない」 
「本当に?」 
「絶頂と爆発って全然違うものなの。神経がまったくの別物なの。ねじれの関係。可笑しい。わたし、そんなこと考えたことなかった。絶頂と爆発」 
絶頂と爆発。それはどこかの城に掛けられている現代絵画の題名のようも聞こえた。 
同時に僕は少しだけ恥ずかしくなった。絶頂と爆発は、確かにとても別物のように感じてきた。 
「すまない。きみは絶頂と同時に爆発はしない」 
「あ、でもさっきの呪文はだめね。わたしが唱えると、本当に爆発しちゃうから」 
「メガンテ?」 
「そう、わたしたちって、そういう風にできているの。岩で、丸くて、顔があって」
「そしてその裏側には温かく濡れたヴァギナがある」 
「そう、もう濡れてるの。触って、もっと」 
僕は爆弾岩の裏にある岩の割れ目にそっと指を入れた。 
表面の硬さからは想像できないくらいに、中は柔らかく、そして温かく濡れていた。 
声を押し殺す爆弾岩に僕は丁寧に愛撫をした。 
入口の柔らかさとは裏腹に、奥のほうは少しざらざらしていた。きめ細やかな砂のような感触が指に残る。 
「ねえ、もう大丈夫。挿入れて」 
僕は爆弾岩に覆いかぶさり、ヴァギナにペニスを入れた。 
柔らかな内肉が僕のペニスを包みこんで締め付けてきた。 
「どう?わたしの中に入った感想」 
「とても柔らかい」 
「きみのは相変わらず硬い」 
「動いてもいい?」 
「はやくして」 
僕は爆弾岩にしっかりと抱きつき、抽送のスピードを上げた。 
声を押し殺していた爆弾岩からは、次第に短い声が漏れるようになってきた。 
「すごい。もうダメかも。声出ちゃう」 
「構わない」 
「はしたない声がでちゃう」 
「はしたなくなんかない。大丈夫」 
「声出ちゃう、声出ちゃう」 
僕は強く激しく腰を振ってみせた。 
爆弾岩は快楽でしだいに声を押し殺せなくなり。 
「岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩」 
「うわっ!」 
僕はペニスを抜いて飛び退いた。 
何かとてつもなく恐ろしい不安がじわじわと頭を満たしていた。 
それは焦燥感を多分に含んだ引き返すことが困難に思わせるような警告的な不安だった。
「ねえ、今のって」 
「声、大きかった?」 
「大きい小さい以前に、何かとんでもないものを聞いた気がする」 
「声出す相手は嫌い?」 
「嫌いではないけど」 
「よかった。ねえ、はやくその硬いのでわたしをもう一度塞いでよ」 
僕はおそるおそる、爆弾岩の穴にペニスを挿れた。 
「岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩」 
僕はもうそれをそういうものだと思い、心を無にしピストンを繰り返す。 
「岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩岩、岩岩、岩石岩石岩石岩石岩石岩石岩石岩石岩石」 
怖い怖い快楽の段階が引きあがるとどうも表現が変わるくさい怖い岩石っていう喘ぎ方怖い。 
「岩石岩石岩石、岩せ、岩漿岩漿岩漿岩漿岩漿岩漿岩漿岩漿岩漿岩漿岩漿」 
さらに快楽が引きあがったっぽい怖い怖い岩漿ってなにそれ熱い急に膣内が熱くなったなにこれ怖い怖い。 
「岩漿岩石岩石火成岩花崗岩火成岩花崗岩火成岩堆積岩堆積岩石礫岩砂岩砕屑岩玄武岩玄武岩玄石灰石」 
怖い怖い怖い今どんな状況なのそれありとあらゆる岩の種類で喘いできた怖い怖いまじ怖い。 
「岩石!マントル!岩石!マントル!マントル!マントルマントルマントル!」
怖い怖いこんな状況でもマントルって聞くとちょっと字面的にも興奮してくるなにこれ怖い自分が怖いよあと怖い。 
「マントル!」 
と爆弾岩はびくんと数回震えた。 
そしてそのまま体を回転させるように、僕に覆いかぶさって来た。 
「あ、ちょっと」 
爆弾岩が上に乗るかたちの態勢となり、爆弾岩は積極的にその体を上下に動かし始めた。
これまで以上の快楽の波が一気に僕の体を駆け巡った。 
「あ、だめだ、すごく気持ちいい。声が出てしまうかも。声が」 
「いいわよ、聞かせてきみの声」 
「声が、やばい、声が」 
息が荒くなった僕は、声が押し殺せなくなり、そして。 
「人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人」 
「うっわ!」 
爆弾岩は僕から慌てて飛び退いた。 
何か途方もない恐怖に遭遇してしまったかのような顔で、おそるおそる近づいてくる。 
「ねえ、今のって」 
「もしかして、僕、声漏れてた?」 
「漏れがどうこうとか、そういう次元じゃなかった」 
「ねえ、早く続きをしよう。僕のはもう爆発寸前だよ」 
爆弾岩は少し警戒をしながら、再び僕の腰に体重を預けた。 
「人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人」 
「怖い怖い種族間の溝が想像以上だという後悔に苛まれながらのセックス怖い怖い」 
「人人人人人、人人、ヒ、人間種族人間種族人間種族人間種族人間種族人間種族人間種族人間種族」 
「怖い怖いどうもわたしと同じ快楽の段階による喘ぎ方があるっぽい怖いなにそれほんとに喘ぎ声なのまじ怖い」 
「眼底眼底眼底眼底眼底眼底眼底眼底眼底眼底眼底眼底眼底」 
「やだやだなにこれ何言われてるの眼底って何それ怖い響き怖いペニスが当たってるの裏から見て眼底ってことなのなにその発想それ怖いまじ怖い」 
「人!眼底!人、チ、チントル!チントル!チントル!チントル!チントルチントルチントルチントルチントル!」 
「チントルってなに!?マントルならわかるけどチントルってなに!?なにそれチントル怖い怖いチントル怖い!!」 
「チントル!!」 
こうして僕は、爆弾岩の体内の奥深くに激しく射精した。 
それは噴火のような、激しく流れるマグマのようなとても熱い射精だった。 

僕らは岩陰で裸のまま横になった。 
お互いに激しく動いたせいでとても汗をかいていた。 
僕は袋からアモールの水を取り出してそれを分け合って飲んだ。 
「どうだった? わたしとのセックス」 
「気が付くことが多い、実りのあるセックスだった」 
「わたしも」 
「でも、それ以上に最高だった」 
「実は同じ意見」 
僕らは横になりながらくすくすと笑いあった。 
「ねえ、ところで」 
と爆弾岩がころころと体を寄せながら聞いてきた。 
「眼底、ってどういう意味」 
「がんてい」 
「さっき、口に出してた。聞き間違いでなければいいけど」 
「なんだろう、憶えていないな。眼底って、たしか目の底のことだと思うけど」
「気持ち悪かったらごめんなさい、でもせっかくだから話しておきたいの。いまね、きみに突かれているときに、確かに目の奥に刺激を感じたの」 
「目の奥」 
「よくよく考えてみたら、わたしの穴の奥には顔があって。それでね、わたし気が付いたの。ここに性感帯があるのかもって」 
「なるほど」 
「ねえ、これってすごいことなの。わかる?初めて気が付いたの」 
と腕の中の爆破岩は興奮が止まらない様子で続けた。 
「眼底、そう、目なの。すごい発見。気持ちいいところ見つけちゃったの。みんなにも教えなくちゃ。わたしたちが知らなかった性感帯は目なの。そう、目。眼底」 
め。がんて。 
爆弾岩が輝きだす。 
僕は微笑み、そういえばいま何ゴールドあったかなと思考をめぐらす。 
10000Gはあったな、と思ったところで僕らは爆発した。 

スライムとのセックス

「ねえ、私とセックスする気はない?」 
僕が倒したばかりのスライムは、起き上がるなりそういった。 
僕はちょうどムチをしまい、次のモンスターを探しているところだった。 
セックス?何を言っているんだろう。 
「確認しても?セックスだって?」 
「そう」 
「仲間になるんじゃなくて?」 
「セックスって言ったの、聴こえてなかったの?」 
「聴こえた。だから驚いているんだ」 
やれやれ。どうして僕がスライムからセックスを誘われているのだろう。 
僕はムチのグリップをしばらく眺めていたが、そこには何も答えは書かれていなかった。
「何度も聞いて悪いのだけれど」 
「どうぞ」 
「ここでいうセックスは、僕たちの中で共通認識の言葉だろうか?」 
「おそらくは」 
「たとえば、きみらスライムは、何かおしゃべり的なものをセックスと呼ぶとか」 
「呼ばない。ピロートーク以外は」 
「もしくは、しりとりのようなちょっとしたお遊びをセックスと呼ぶとか」 
「呼ばない。尻をとる、という意味なら話は別だけれど」 
「もしかして、ペニスとヴァギナを利用した肉体的なコミュニケーションのことを?」 
「まさにそのとおり」 
僕は深いため息をついた。いろいろ考えることが多すぎた。 
それは多面的に複雑で、角度を変えるごとに違った側面を見せる、そんな類の問題だった。 
「ものは試しよ」 
スライムは自信に満ちた顔をしていた。 
「ものは試し」 
と僕は言ってみた。 
「そう。試してみないと、分からないことって多いのよ。知ってた?」 
ものは試し。 
僕は口に出さず、もう一度言ってみた。 
そして、確かにそうかもしれないなと思った。 
出会ったばかりのスライムとセックスをするというのは試してみないと分からないことだと、純粋に思った。 

いい洞窟があるの、と言ってスライムは僕を案内した。 
そこは程よい奥行きの空洞があり、近くに清潔な水場もあった。 
先に水場で身体を洗い、僕が洞窟の中で横になってしばらくすると、水場からスライムが戻ってきた。 
スライムはタオルをしていなかった。 
「どう?わたしの体」 
僕はしばらく考え、 「魅力的だ」 とだけ言った。 
「どれくらい魅力的?」 
「言葉では表現できないくらい」 
「したくなった?」 
「とても」 
「ほらね」 
と言ってスライムは僕の隣に移動した。 
「安心して。あなたは何もする必要はないの。全部私がしてあげるから」 
スライムとのセックスの仕方なんてまったく見当もつかなかった僕は、正直ほっとした気持ちで体を横にした。 
そして考えた。 
スライムからセックスに誘われて、流れでここまで来てしまったことは事実だけれど、かと言って僕が何もしなくていいかと言われれば、本当はきっとそうではないのだ。 
セックスというのは肉体的なコミュニケーションであって、シャドーボクシングでも走り幅跳びでもない。 
お互いの性器を使った双方的で相乗的な活動なのだ。 
スライムがセックスをするのではなく、僕とスライムとでセックスを行うのだ。 
自分の浅ましい考えを恥じて、僕は体を起こした。 
「うん?」 
と傾げるスライムに、僕は短く息を吸い覆いかぶさった。 
「ちょっと」 
驚くスライムに構わず、スライムを両の手で抱いた。 
そして弾力性のあるスライムの体に5本の指を這わせ、全身をくまなく愛撫した。 
指先に緩急をつけ、スライムの頭からお尻までを丁寧に入念に時間をかけて愛撫し続けた。 
そして僕はスライムのお尻のあたりに湿り気を帯びた箇所を見つけた。 
ここがスライムのヴァギナなのだと思った。 
「ねえ、スライムと寝たことは?」 
「実はないんだ」 
「そう。とても上手よ。相性がいいのかも」 
とスライムは言った。 
ありがとう、と僕は言って、その湿り気を帯びた部分を指で強く押してみた。 
「んぉほおおおお!!!」 
僕は押し黙った。 
何か表現しにくい何かを感じた。 
とても表現しづらいが、とても重要な何か。物語のトーンを根底から覆すような深い何か。 
試しにスライムの秘所をもう一度指で弾いてみた。 
「ぬぉほおおおおお!!!!!!」 
僕は押し黙って、手を一度抜いた。 
それは頭を背後から違和感の塊のようなもので殴打されたかのような、ひどく鈍い重みを内包した混乱だった。 
「うん?どうかした?」 
とスライムは身体を起こして僕に尋ねた。 
僕はしばらく悩んでから正直に言った。 
「そんな声が出るとは思わなくて。てっきり」 
と僕は慎重に言葉を選んだ。 
「てっきり、もっと気取った文体で最後まで行くものとばかり」 
僕はとても正直に言った。 
「その、ジャズ好きな作家張りな文体というか」 
「エルサレムで卵とか壁とかの話をする?」 
「そう。そんな感じで最後まで、気取ったセリフで行くものとばかり」 
「馬鹿ね。ねえ、さっきのところ、触って」 
僕はスライムのヴァギナに指を入れた。 
「んほぉ!んっほぉおおお!おっほほぉおおおおお!!!!」 
僕は黙ってスライムのヴァギナの中を指で掻き出した。 
「むぉおおおおおぉ~~~ん!!きたきたぁああ!!!私のヴァデジャルに指きたああぁぁあぁああ!」 
ヴァギナじゃなかったヴァデジャルだった。何それ知らない。何それ怖い。何に指が入ってるのこれ怖い。 
「イボグリデスもグリグリ触ってぇぇええ!!!」 
イボグリデスって何それ怖い。スライムが訳の分からん器官に触らせようとしてくる怖い。 
「んお゛ぉぉお!! ヴァデジャル指で掻き出しながらイボリデスグリグリしてぇぇぇえええ!!ヌポゲにも指いれてぇぇええええ!!」 
増えた怖い。スライムの性感帯増えた怖い。 
「おごっ、おおぉぉおお!んごぉごおおおおお!!ツェギチョッパリもぉお!!ツェギチョッパリもおおお!!!」 
多いやだ怖いスライム性感帯が想像以上に多い怖い。 
「おっほおおおおお!もう出ちゃいそおおおおお!!ホイミ汁ぅ!!ホイミ汁出りぅううぅうう!!」 
ちょっと世界観が戻ったくらいでは巻き返せないくらい怖い領域に入ってるあと汁つけたら語感めっちゃ気持ち悪い怖い。 
「ぼこごひいいいいいぃぃいぃいいい!!!!ゲァナ汁もゲバデュ汁もゲデデゲデル汁もぉおおお!!んほおおおおお!!!!!」 
ゲの付く分泌腺多いやだマジ怖い。 
「いぐうううううううううう!!!ゲルググミルク出しちゃうゥゥウウウウウウウ!!!!」 
まだあったゲの汁マジ怖いすごいの出てきそうマジ怖い怖いよあと怖い。 
「もうだめぇぇぇえええ!!もう挿れてぇぇえええ!こんなのぉ!んほおおおお!我慢んほぉ!!!できんほぉぉおほおおおお!!」 
「ちょっと」 
僕の制止も聞かず、スライムは僕の上に覆いかぶさってきた。 
「ちょっと待って。心の準備が、ねえ、ちょっと」 
僕は必死でスライムを押しとどめようとしたが、スライムは間を縫うようにして僕の勃起したペニスにかぶさっていった。 
膣内に僕のペニスが入った。 
「ん゛ぐぉおおおおおぉおお!!ん゛ん゛気゛持゛ち゛ぃ゛いいいいい゛い゛い゛い!!!!!」 
「やだちょっと待って何その声怖い」 
「んぅほぉぉぉおぅぅ!!!スライムの膣内ギモジイイイイィイイイイ!!!」
「やだ何これ私が最後までんほんほいうやつの話かと思ったら違った怖い」 
「ごびゃぁぁあ゛!!僕のお゛ぢ゛ん゛ぽ゛溶けちゃうぉぅうう!んっぼ゛おぉ゛おん゛ほ゛ぬ゛ほお゛ほぉ!!!」 
「やだ濁点多い怖いあとぽ゛ってなんて読むの怖い」 
「お尻の穴もぉおぁぁぁほじほじいぃぃいああおあぬほおおぉぉお!金玉ぁぁもぉおおおおあああ!!ぐびっぽぼごぼびゃぁっぁあ!」 
「下半身の性感帯を全部一気に要求してきた怖い」 
「ん゛ぁあ゛ぁあ!アギラズαもぉ舐めてぇえおおおお!!!」 
「全部じゃなかった知らない性感帯あった怖い」 
「ぬ゛ぼぉぁぁあ!アギラズβもぉおぉぉおお!!」 
「何それアギラズ性感帯どうもシリーズっぽい感じがしてきた怖い」 
「んほぉ゛お゛お゛ぉぉ!アギラズδからアラギズΘまで一気に舐めてその4秒後にアギラズπとφを交互に3回押して反時計回りアギラズΩグリグリするの7セット繰り返してぇぇぇぇもぉおぉおお!!」 
「アギラズやっぱりΩまであったあと初対面での初セックスで超高度な愛撫要求してきた怖い浅まし怖い」 
「お゛ち゛ん゛ち゛ん゛の゛先゛っ゛ぽ゛フュモフュモしぇぇえんほがぼりゅばでゅべぼぉぉおお!!」 
「知らない愛撫表現出てきた怖い」 
「し゛ゅごいよおお゛お゛お゛お゛ぉ!!ゲルググ・ラテもうでるぉるるぉおおぉおおお!!」 
「どうも私と近い分泌腺持ってるっぽい怖いゲルググ・ラテの不明感怖い怖いよあと怖い」 
「発射する!」 
こうして僕は、スライムの体内の奥深くに激しく射精した。 
何度も何度もゲルググラテを射精した。 

隣で寝息を立てるスライムを尻目に、僕はため息をついて洞窟の壁に背をもたれた。 
結局あれから獣のように何度も何度も交わり、スライムは疲れて寝てしまっていた。 
やれやれ、と僕は思った。 
スライムとセックスをすることで何かを得たという実感はなかったが、今はひどく冷静になっている自分がいるのが分かった。 
興奮も情熱もそこにはない。あるのは脱力と虚無感だけだった。 
はたと気が付く。 
「そうか」 
僕は立ち上がり、ステータス画面を確認してみた。 
「なるほど、これが」 
こうして僕は、賢者に転職を果たしたのだった。